どうして?『英文600選』50年以上鹿児島の高校生に重宝されるワケ(2023年7月13日放送)
身近な疑問について調べる「どうして?こうして!鹿児島」です。
今回は、鹿児島の高校生が使っている英語の文例集「600選」です。高校時代に使った!という方もいらっしゃるかもしれません。この600選は鹿児島オリジナルで、50年以上の歴史がある教材です。なぜ長く使われているのか?その歴史を調べました。
『英作基本文例600』=通称600選です。コンパクトな冊子に、英語の基本文例が600文掲載されている教材です。
(大学生 鹿児島出身)「使ってました。懐かしい、市電で毎回読んで覚えていた。朝のテストにむけて」
(大学生 宮崎出身)「使ってない、わたし宮崎(出身)なんです」
(20代)「ことわざとかあったイメージが。『ローマは1日にしてならず』とか覚えている」
(50代)「高校の授業で使っていたと思う。薄い冊子ですよね、暗記しました」
(20代)「正直言うとあまり好きではなかった」「私の両親世代も使っていたので、長年にわたって愛されているというか、必要とされていると感じた」
親子2代にわたり使った人もいる600選。県内のおよそ7割の高校で採用されています。
初めて出版されたのは1971年。マクドナルドの日本1号店や日清カップヌードルと同じ年です。当時の価格は80円で、現在と比べおよそ5分の1の価格でした。
50年以上前に誕生した理由を知る人がいます。
(伊集院高校英語科 田口清隆教諭)「(当時)鹿児島の英語力がないということで、何かしないといけないというのがあった」
伊集院高校で英語を教える田口清隆教諭です。20年以上、600選の編集に携わっています。
600選が誕生した1971年当時、中学校で英語は必修科目ではありませんでした。高校生で「初めて英語を学ぶ生徒」と「中学から学んでいる生徒」との差を埋めつつ、それぞれの英語力を上げるには・・・何とかしようと立ち上があったのが、当時の鹿児島の英語教師たちでした。
(伊集院高校英語科 田口清隆教諭)「最初、東京や大阪をまねて例文集をつくろうということで、鹿児島県の英語教員がチームを組んでつくったと聞いています」
600選には、英語の基本文型や、時制、完了形、助動詞、関係詞などを使った基本文例が600個収録されています。
1971年から版を重ね、いま使われているのは第6版です。“Rome was not built in a day”(=ローマは1日にしてならず)など初版から変わらない文がある一方で、消えた文章も・・・。
(伊集院高校英語科 田口清隆教諭)「(使っていたのは)これあたりかな、はるか昔。『親のいない子どもはみなしごと呼ばれる』というとんでもない英文があった。教員になったころ600の改訂の話があり、『これはまずいのではないか』とアンケートで書いて消してもらった」
そして、社会とともに変わった例文も。
初版の「90歳まで生きる人は少ない」=“Few people live to be ninety.”は、10年後の改訂で「100歳まで生きる人はほとんどいません」=“Few people live to be a hundred years old.”に変化。
現在は「私の祖父は100歳まで生きました」=“My grandfather lived to be a hundred years old.”と長寿社会を反映しさらに変わっています。
改訂には英語教員のアンケートのほか、海外からの外国語指導助手・ALTの先生たちにも協力を得ています。
(伊集院高校英語科 田口清隆教諭)「生の英語はいろんなことを教えてくれるので、現場でALTと話をする中で現実に即した英語に」
変わったのは例文だけではありません。2004年の第5版からは中身が2色になり、赤色で簡単な解説や注釈が記されています。そして音声CDも発売。正しい発音を覚えることができ、最近の会話重視の英語教育にも対応しています。
そして、英語の授業では、今も昔も「600選」の小テストに臨む高校生の姿があります。
(伊集院高校英語科 田口清隆教諭)「例えば受験英語、こんな回りくどい表現は使わないというのも(600選には)あるが、文法を教えるためにあえて入れたような文法もある」「高校生の教材だからこれくらいは覚えてほしいという内容に」
実際に600選を使う現役高校生は・・・。
(伊集院高校生徒)
「入試に役立つすごくわかりやすい教材」
「結構使い込んでる。大変と言えば大変だけど、大学に行くためには大切かな」
高校生たちの英文法の基礎固めとして50年以上重宝される600選。今も進化し続けています。
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