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空き家を活用する奄美の「伝泊」とは 建築家 山下保博さん

きょうは、奄美地方で進められている空き家を活用して地域の活性化につなげようという「伝泊」という取り組みについて、奄美支局・有島記者の取材です。

奄美市笠利町の海岸にほど近い場所に立つ昔ながらの建物。実はおととしから営業している宿泊施設です。

建物は、空き家となっていた古民家を改修したもので、古い住宅の味わいを残しつつも、宿泊客が過ごしやすい空間を作り出そうと、トイレやお風呂などの水まわりは現代的に改修され、ワインセラーも設置されています。

(山下保博さん)「昔のじいちゃんばあちゃんの家に来た廊下はイスの木というんですけど昔ながらの奄美の材料とか」

この宿泊施設をオープンさせたのは、奄美市笠利町出身の建築家・山下保博さんです。
山下さんは国内外の様々なコンテストで賞を受賞し、九州大学で講師を務めるなど、第一線で活躍する建築家で、室内にはアート作品がさりげなく飾られるなど、山下さんのこだわりも光ります。

(山下さん)「アートの持っている懐の広さとか豊かさというものをこの家とシンクロさせてもらいたい。伝統的な家屋はみんな空き家ですてられているものが多いがそれがすごく価値があるんですよと言いたいためにアートを同列に置いていく」


その山下さんが3年前からふるさとの奄美で取り組んでいるのが、「伝泊」というプロジェクトです。
「伝泊」はふるさと奄美の「伝」統、「伝」説を未来に「伝」えていきたいと山下さんが生み出した言葉で、民家を改修した施設に泊まってもらい、奄美の自然、文化などに触れてもらおうというものです。

(山下さん)「自然も豊かですが集落の持っている文化こそ世界に誇れるものだと思っているので、それを自然とともに残していきたい、次世代まで伝えていきたい、そのためには集落にあるものを残しつつ、そこに観光客が来て集落の人と交わるような場所を作りたいと思った」

現在、「伝泊」ができる施設は、奄美大島、加計呂麻島、徳之島に15棟あり、来年度には30棟まで増える予定です。


さらに、「伝泊」を発展させた新たな取り組みも始まりました。

今年7月に奄美市笠利町にオープンした2階建ての宿泊施設「まーぐん広場」です。

1階にはカフェを備えていて、地域の子どもやお年寄りが立ち寄って観光客と交流をしたり、イベントを開いたりすることができます。
「まーぐん」とは奄美大島の方言で「みんな一緒に」という意味で、多くの人が集う地域活性化の拠点になってほしいとの願いがこめられています。

(山下さん)「伝泊から地域包括的なまちづくりまずは笠利町だけど、奄美市、加計呂麻島、徳之島、沖永良部島、与論島までもこの3~5年でまちづくりをやっていければ」


地域に増えつつある空き家の解消や地域活性化など効果が期待される「伝泊」プロジェクトですが、その原点は、「客」として奄美を訪れるのではなく、まるで奄美に残る昔ながらの暮らしを体験してもらい、その魅力を直接感じてもらうことにあると山下さんは話します。

(山下さん)「お客さんがここでこうやって夕日を見ながらビールを飲んで、そうすると集落のじいちゃんばあちゃんが出てきてそこで会話が生まれたとか、すごく良かったですとコメントをもらうとそのために仕掛けたんですっていう」

奄美の各地で動き出している「伝泊」の取り組み。ふるさと、そして奄美を思う山下さんの思いとともに、今後、さらに広がっていくことになりそうです。