地域防災 桜島大規模噴火への備えは

桜島では1914年の大正噴火から104年あたる今月12日に恒例の総合防災訓練が行われました。
その想定となったのが、大正噴火クラスの大規模噴火です。大規模噴火対策の現状や課題について考えます。

今年の総合防災訓練は、桜島の住民や関係機関などおよそ4600人が参加しました。

訓練想定のモデルとなっているのが、20世紀国内最大規模の噴火、大正噴火です。


噴出量は桜島の1回あたりの噴火の10万倍規模に上る30億トン。噴火の最中に桜島の南西沖でマグニチュード7.1の地震がおき、58人の死者が出ました。
大正噴火を教訓に、桜島では1972年から毎年、避難を中心に訓練が続けられています。


しかし、大規模噴火の際には桜島以外の地域でも大きな被害のおそれがあると専門家は指摘します。

鹿児島大学で桜島の大量降灰などの研究に取り組む石峯康浩特任准教授です。
鹿児島大学地域防災研究センター・石峯康浩特任准教授「鹿児島県本土であればどこの地域でも噴火の影響を受けると考えていたほうがいいと思う。」

国などによる検討委員会がまとめた桜島の大規模噴火時の降灰予測では、半径20キロあまりのエリアで50センチ以上の、県本土のほぼ全域で10センチ以上の灰が積もりうるとしています。
特に風下では、大きな被害が予想されるといいます。

鹿児島大学地域防災研究センター・石峯康浩特任准教授
「大量降灰とよく言われるが、実際は数センチぐらいの軽石が降ってくることが想定されるので、いわゆる日常的な桜島の噴火とは全く違う現象だと考えていただきたい。」


「電気や水道も止まる。また、木造家屋だと雨と混ざって屋根に積もった重みでつぶれてしまうことも生じうる大量の降灰が考えられる」

また、大正噴火の死者58人のうち29人は噴火からおよそ8時間後に起きた地震の家屋倒壊などによるものでした。


石峯さんは、地震や津波などへの備えも欠かせないと指摘します。
鹿児島大学地域防災研究センター・石峯康浩特任准教授
「大正噴火の時も大きな地震が噴火に引き続いて起きていますし、津波のおそれもあると考えられる。そうした噴火だけでなく、ほかの災害も含めて備えを進めていく必要があると思います」

桜島以外の地域でも起こりうる被害にどう対応するのか?
鹿児島市では、市街地中心部で1メートルの灰が積もる想定などを盛り込んだ、大量降灰対策の検討を進めていて、年度内にも地域防災計画に反映させようとしています。
しかし、自治体単位の対応だけでは限界があると指摘する声もあります。

鹿児島市立病院救命救急センター・吉原秀明センター長
「市のレベルでは追いつかないようなことがたくさん出てくると思う。特に鹿児島県、ないしは国が動かないと何ともしえないような事態が想定されると思う」
鹿児島市立病院救命救急センターの吉原秀明センター長は、医師の立場から、大規模噴火に伴う大量降灰で医療機関が直面するリスクを独自に検討しています。
吉原センター長によりますと、大正噴火の際に10センチ以上の灰が降った大隅半島のエリアにある医療機関は114、さらにその周辺で救急車などの走行ができなくなるとみられるエリアに208あります。
こうしたエリアでは施設の損傷や交通まひによる孤立化などのリスクがあります。

一方、灰が鹿児島市街地側に流れた場合、医療機関は10センチ以上の降灰が想定されるエリアに470、車両の走行ができないエリアでさらに457あり、1000件近くにまで増えます。
これらの医療機関では入院患者を避難させるなどの対応が必要になるとみられます。
さらに一般市民の避難も考えると、県内だけでは対応しきれないおそれがあり、事前に県や国レベルで調整しておく必要があると吉原センター長は指摘します。
鹿児島市立病院救命救急センター・吉原秀明センター長
「かなり広域に何十万人というレベルの避難計画が必要で、その受け皿としては鹿児島県だけで対応できるとはとても思えない」「事前にこれだけの搬送ニーズが出てしまうということをちゃんと情報共有しておく」
「私は医療従事者として桜島からの事前島外避難だけではすまされないのではないかと危惧は持っている」

県の地域防災計画では、桜島の大正級の大規模噴火での広域被害の対応については関係する市町・機関と連携して対応していくことなどが2ページ記されているのみです。


県は、それぞれが防災計画を持つ自治体・機関との連携によって広域災害への対応は可能とする一方、必要があれば、昨年度設置した火山防災協議会で議論するとしています。

県危機管理防災課・玉利雅昭課長
「火山防災協議会の中で今後、議論されていく部分が出てくるのではないか。」「県、市町村長、火山の専門家も入っているので、その中で必要な部分は議論を深めていく必要がある」

大正噴火から100年以上が経ち、桜島のマグマの供給源とされる姶良カルデラの地下のマグマだまりには、大正噴火で放出されたマグマのおよそ9割再びたまっているとみられています。
そうした中で大規模噴火と広域災害にどう備えるのか?対策の実効性を高めていく努力が求められています。