雨期防災②土砂災害のリスクと避難

去年7月の記録的な大雨で1人が犠牲になった曽於市を訪ね、避難のあり方などを考えます。道山記者の取材です。


曽於市大隅町の神牟礼集落。およそ140人が暮らす山あいの地域です。土砂崩れで土がむき出しになった斜面。去年、県内を襲った記録的大雨は、この集落にも大きな爪あとを残しました。

「初めてです。もうすっごいたくさん降って」
「避難しようにも全部土砂崩れでふさがって孤立状態でした」


去年6月28日から7月4日にかけ1週間続いた大雨。

雨量は平年の7月1か月分の2倍を超えたところもあり、気象庁が公開している土砂災害の危険度分布は、広い範囲が「極めて危険」を示す濃い紫色に変わりました。

この間、県内で発生した土砂災害は年間の平均の2倍を超える158件に上り、2人が犠牲になりました。

曽於市大隅町の神牟礼集落では土砂崩れで住宅が押しつぶされ、ひとり暮らしの山下マチエさん(85)が犠牲となりました。

(道山記者)「木々やがけに囲まれた場所に被害にあった住宅はありました。いまは更地ですが、崩れたがけは今もそのまま残っています」

 

(柏木イツ子さん)「マチエさんです。明るくてひょうきんな人だったんですよ」

亡くなった山下マチエさんの親族・柏木イツ子さん(79)です。土砂に巻き込まれた山下さんを助けられなかったことを、悔やんでいます。
(柏木さん)「(山下さんを)心配するうちに、どうなっているか分からないと言って、みんな自分のことはさておいて、駆け付けて捜索活動見守った」


曽於市全域に避難勧告が出た7月3日。


山下さんは老人会で近くの温泉に出かけていました。消防団が集落をまわり、避難を呼びかけたのは、山下さんが自宅にいない間でした。
山下さんは夕方帰宅した後、避難はせず、翌日、崩れたがけの土砂の中から発見されました。

曽於市大隅町の降り始めからの雨量は、平年の7月1か月分のおよそ2.5倍の800ミリ余りに達していました。

(柏木さん)「人口も減るし、みんなひとりになって、災害がやっぱり怖い」


山下さんの捜索にあたった消防団員は、この場所での土砂崩れは予想していなかったといいます。

(神牟礼地区の消防団・山ノ内洋一分団長)「大雨で地盤が緩んでいたと思うが、今までの経験で災害起きたところではなく、非常にびっくりしました」

県は、崩れるおそれがある急傾斜地などおよそ2万か所を「土砂災害警戒区域」に指定していますが、県によりますと、山下さんの家の近くの崖は、今年度内に指定される見通しでした。
山間部の多い鹿児島、急な斜面を警戒区域に指定するには、調査から指定まで最短でも1年半は必要で、人員も限られる中、作業が追いついていないのが現状です。


山下さんが巻き込まれた土砂崩れの現場を調査した砂防学が専門の鹿児島大学・地頭薗隆教授です。

土砂災害警戒区域に指定されていなくても、急な斜面であればどこでも大雨で崩れる危険があることを認識してほしいと話します。

(鹿児島大学・地頭薗隆教授)「斜面はどこでもくずれる、これが基本です。(斜面の表面に)風化物ができたら崩れる、これが自然のサイクル。防災マップも完全ではないので」

そして、地頭薗教授は、大雨の来ない今のうちにまわりの危険や避難ルートを確認し、「自分の防災マップ」を作ってほしいと話します。

(鹿児島大学・地頭薗隆教授)「例えば、避難所へはどのルートを通ればいいかそこまで考え、災害からどうやって逃れるか。すべて行政任せではなく、自分たちで、集落で、自分たちの防災マップを作ることが大事」


山下さんが犠牲になった土砂崩れから10か月。親族らは、この経験を教訓に、防災への意識を新たにしています。

(柏木さん)「(避難は)自分で考えて行動起こさないと。誰かが助けに来るだろうとか、甘えた気持ちはいけない」

(山ノ内分団長)「同じことを二度と繰り返さないよう、住民のみなさんへ(早めの避難の)声がけをしながら、安心して暮らせるように日々、活動したい」

県内を度々襲う大雨。土砂災害から自分の命を守るためには、過去の経験や自治体の情報だけに頼らず、日頃から避難の意識や備えをしておくことが重要です。

土砂災害に関する「防災マップ」は、多くの市町村が各世帯に配布しているほか、自治体のホームページでも確認できます。
まだ、調査中などを理由に、「防災マップ」を作っていない自治体もあるということで、ご自身で身の回りに危険な崖がないか、あらかじめ調べておくことも大切です。